WordPressサイト引き継ぎの重要性と全体の流れ

サイトを売りたい方へ

WordPressサイトを売却する際には、ドメインやサーバー、サイトデータなど多くの要素を新しい所有者に引き継ぐ必要があります。
適切に手順を踏めば初心者でも対応可能ですが、手順の抜け漏れがあるとサイトが表示されなくなったり、機能しなくなる恐れがあります。
本記事ではドメイン移管サーバー移転データ移行SSL証明書メールGoogle Analytics/Search ConsoleWordPressユーザーアカウントまで、サイト売却時の引き継ぎ方法を完全解説します。
この記事だけでWordPressサイトの引き継ぎが実行できることを目標に、重要な用語解説や初心者向けのポイントを交えて説明します。

引き継ぎ作業の主なステップ概要

まず最初に、WordPressサイトを譲渡する際に必要な主な作業の流れを確認しましょう。以下が大まかなステップになります。

  1. ドメイン移管の準備と実施 – ドメイン(サイトのURL)の管理権を買い手に移す
  2. 新サーバーの契約・環境準備 – 新たなサーバーを用意しドメインを追加設定する
  3. サイトデータのバックアップ – 旧サーバーでWordPressのファイルとデータベースを丸ごと保存する
  4. サイトデータの移行・復元 – 新サーバーへデータをアップロードし、WordPressを復元する
  5. 動作確認とDNS切り替え – 新サーバー上でサイトが正常に表示されるか確認し、問題なければドメインのネームサーバーを新サーバーに向ける
  6. その他設定の引き継ぎ – SSL証明書の再設定、メールアドレスの移行、アクセス解析ツール(GA/SC)の連携解除・引き継ぎ、WordPress管理者アカウントの変更など
  7. 旧サーバーの解約 – すべてが完了し問題ないことを確認したら古いサーバー契約を終了する

以下、それぞれの手順を具体的に見ていきます。

1.ドメイン移管の方法とポイント

ドメイン移管とは、ドメインの管理会社(レジストラ)を別の会社に変更することです。
サイト売却時には、ドメインの所有権を買い手に移すためにこの手続きを行います。
現在ドメインを管理しているレジストラから、新しい所有者が指定するレジストラへドメインを移すイメージです(まさに「ドメイン管理会社の引っ越し」になります)。
なお、同じレジストラ内で名義変更・アカウント移行する場合は手続きが簡略化されることもあります。
どちらにせよドメインの契約者情報を買い手に変更し、管理権を引き渡す作業が必要です。

ドメイン移管の準備(現レジストラ側)

ドメイン移管を開始する前に、現在契約中のレジストラで以下の準備を行いましょう。

  • Whois情報公開代行の解除 – Whois代理公開サービスを利用中の場合は停止します(移管手続きの連絡はWhois情報のメールアドレスに届くため、代行を解除し正しいメールが届くようにします)。※管理画面の該当設定画面のスクリーンショットを用意すると良いでしょう。
  • 登録者情報の確認 – 現在登録されている契約者名やメールアドレスなどWhois情報が正確か確認します。誤りがあると移管承認メールを受け取れません。
  • ドメイン取得日・更新日の確認 – ドメイン取得から60日以内や直前に更新したばかりの場合、移管できない場合があります。移管可能な状態か確認しましょう。
  • レジストラロックの解除 – ドメインに移管禁止ロック(Registrar Lock)がかかっている場合は解除します。この操作もレジストラの管理画面から行います。
  • AuthCode(オースコード)の取得 – 他社へ移管する場合、AuthCodeと呼ばれる認証コードが必要です(※JPドメインを除きます)。現在のレジストラからAuthCodeを発行・確認してください。

上記の準備が整わないと移管手続きが途中で止まったり、レジストラから拒否される原因になります。
不備がないよう一つひとつ確実に対応しましょう(この準備段階は初心者がつまずきやすいポイントなので、各項目の設定画面をキャプチャしたスクリーンショット付きで解説することをおすすめします)。

ドメイン移管の実施(新レジストラ側)

現レジストラでの準備ができたら、次に新しいレジストラで移管申請を行います。
手順は利用するサービスによって多少異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 新レジストラで移管申込: 新しく管理する側のレジストラの「ドメイン移管申請」画面を開き、移管したいドメイン名を入力します(この画面のスクリーンショットを用意)。
    そこで取得したAuthCode等を入力して移管手続きを開始します。
  2. レジストラへの登録・支払い: 新レジストラのアカウントを作成(またはログイン)し、移管料の支払い手続きを行います。
    移管には1年分の更新費用が必要になるのが一般的です。
  3. 移管の承認: 移管申請後、現在のレジストラにより承認依頼メールが送信されます。
    届いたメール内の案内に従って移管を承認してください。
    例えば汎用JPドメインでは旧レジストラ側での承認作業、.com/.net等ではメール内リンクのクリックで承認します。
  4. 移管完了の確認: 承認が完了すると、数日以内に「移管完了のお知らせ」メールが届きます。
    新レジストラ側の管理画面にもドメインが追加され、Whois情報が買い手の情報に更新されていれば移管完了です。

補足: 同一レジストラ内で名義変更する場合は、上記ほど複雑ではありません。
対象ドメインを別ユーザーのアカウントに移管(プッシュ)する手続きを行ったり、サポートに譲渡申請を出すことで完了します。具体的手順は各社ヘルプを参照してください。

ドメイン移管は完了までに数日~1週間程度かかることがあります。
サイトがダウンしないよう、サイトのサーバー移転作業と並行して進めると良いでしょう(次章で解説)。
ドメインが移管中でもネームサーバー変更等は可能な場合があります。タイミングを調整しつつ進めてください。

2.サーバー移転とWordPressサイトデータの移行

続いて、サーバー移転とサイトデータの引き継ぎ作業です。
これはWordPressサイト譲渡の核心部分で、旧サーバーから新サーバーへサイトのファイルおよびデータベースを移し、同じ状態のサイトを再現する作業になります。
ここでは、新サーバーの準備からデータ移行、動作確認、DNS切り替えまでを順に説明します。

新サーバーの契約と環境準備

新サーバーを契約します。買い手が引き継ぐサーバー環境を用意するステップです。どのレンタルサーバーを利用するか買い手と相談し、必要なプランを契約しましょう。性能や料金は様々ですが、WordPressが問題なく動作するPHPやデータベース(MySQL)が利用できるサーバーを選びます。

旧サーバーとの並行運用期間を確保することが重要です。 新旧サーバーの契約は1か月程度重複させておくと安心です。
すぐに旧サーバーを解約してしまうと、移行後に不具合が出た際に復旧が難しくなります。
特に初心者の場合、移行後に「一部データを移し忘れていた」「サイトが正常に表示されない」等のトラブルが起こる可能性があります。
旧サーバーが手元に残っていれば、そうした不具合への対応が容易になるため、引き継ぎが完了し問題がないことを確認できるまで旧環境は残しておきましょう

新サーバーの契約が済んだら、ドメインを新サーバー側に追加設定します。
レンタルサーバーの管理画面で「ドメイン追加」「ドメイン設定」といった項目があるので、そこから引き継ぐドメイン名を登録しましょう。
例えばConoHa WINGの場合、管理画面でドメイン名を入力し「追加」をクリックするだけで設定でき、同時に無料独自SSLを利用するか選択できます。
エックスサーバーでも「ドメイン設定追加」から同様の操作でドメインを登録可能です。ドメイン追加後は新サーバー側でこのドメイン用の初期ウェブコンテンツ(WordPressを入れるフォルダ)が作成されます。

補足: サーバーによっては、移行元からデータを自動でコピーしてくれる「引っ越しツール」やテスト用URL(動作確認用URL)が用意されています。
エックスサーバーでは「WordPress簡単移行」機能があり、管理画面から旧サーバーの情報を入力するだけでデータ移行ができる仕組みも提供されています。
初心者で不安な場合、こういった機能があるサーバーを選ぶのも手です。
ただし、ここでは一般的な手動手順を中心に解説します。

旧サーバーでのデータバックアップ(ファイル&DB)

新サーバーの準備ができたら、旧サーバーからWordPressのデータをバックアップします。WordPressサイトのデータは大きく分けてプログラムファイル一式データベースの2種類です。この両方を抜け漏れなく取得することで、サイトのテーマ設定やプラグイン設定を含め元の状態をそっくりそのまま移行できます。

  • ファイルのバックアップ: FTPソフト(例: FileZillaやFFFTP)を使って旧サーバーに接続し、WordPressがインストールされているディレクトリの全ファイルをダウンロードします。
    特にwp-contentフォルダ内にはテーマやプラグイン、アップロードした画像など重要なコンテンツが含まれます。
  • データベースのバックアップ: サーバーの管理画面からphpMyAdminなどデータベース管理ツールを開き、WordPress用データベースをエクスポート(ダンプ)します。
    エクスポート形式はSQL(.sqlファイル)で問題ありません。

バックアップすべきファイルやデータベース名が分からない場合は、旧サーバーのwp-config.phpファイルを開くと確認できます。wp-config.php内にデータベース名(DB_NAME)、ユーザー名、ホスト名などが記載されているので参考にしましょう。

プラグインを使ったバックアップ/移行: 手動でのバックアップが不安な場合、All-in-One WP Migrationなどのプラグインを使う方法もあります。
譲渡対象のサイトにこのプラグインをインストールし、「エクスポート」でサイト全体のバックアップデータを出力します。
買い手側では新サーバーにWordPressを立ち上げ同じプラグインを入れ、売り手から共有されたデータを「インポート」するだけでサイトを復元できます。
このプラグインは無料版だと512MBまでのエクスポートに対応しています。
サイト容量が大きい場合は有料版や他の手段を検討してください。プラグイン利用時も念のためデータベースのエクスポートは取っておくと安心です。

新サーバーへのデータ移行とWordPress復元

バックアップが取得できたら、新サーバーへデータを移行(復元)します。以下の手順で進めます。

  • WordPressの設置: 新サーバー側でまだWordPressをインストールしていない場合、先に空のWordPressをインストールします(手動移行の場合は必須ではありませんが、プラグインでインポートする場合はWordPress本体が必要です)。
    多くのレンタルサーバーは簡単インストール機能がありますので利用すると良いでしょう。インストール時にサイトURLは旧サイトと同じドメインを指定します。
    インストール後、一時的に初期状態のブログ画面が表示されますが後で上書きするので問題ありません。
  • データベースのインポート: サーバーの管理画面から新規データベースを作成します(名前やユーザーを設定)。
    そしてphpMyAdminを開き、先ほどエクスポートした旧サイトのSQLデータをインポートします。
    インポートが完了すると、新サーバー上のデータベースに旧サイトと同じ投稿内容や設定情報が取り込まれます。
  • WordPressファイルのアップロード: 次に、旧サーバーからダウンロードしたWordPressファイル一式を新サーバーにアップロードします。
    FTPで新サーバーに接続し、既存のwp-contentフォルダを上書きする形でアップロードしましょう(テーマ・プラグイン・アップロードファイルが反映されます)。
    併せて、ルート直下のwp-config.phpも旧サイトのものに置き換えます。
    ただしwp-config.php内のデータベース接続設定は新サーバーの情報に書き換える必要があります。
    旧サイトのDB接続情報のままだと接続できないため、新サーバーで作成したデータベース名、ユーザー名、パスワード、ホスト名に編集してください。
    この編集を忘れるとエラーが出るので注意しましょう。
  • プラグインを使った場合: 新サーバーにWordPressをインストール済みでAll-in-One WP Migrationプラグインを導入している場合は、管理画面からプラグインの「インポート」を実行し、提供されたバックアップファイルを選択します。
    アップロードが完了すると自動でサイトデータが復元され、ログイン情報も旧サイトと同一になります。
    大容量サイトでは時間がかかる場合があります。
    インポート完了後は必ずサイト表示を確認してください(次項参照)。
    なお、移行用プラグインは作業完了後に不要となるため、セキュリティのため削除しておくと良いでしょう。

移行漏れチェック: ファイルやデータベースのアップロード漏れがないか確認します。特に画像アップロードファイル(wp-content/uploads内)やカスタムアップロードフォルダがある場合、抜けがちです。
テーマやプラグインのフォルダも全てアップロードされたか確認しましょう。
万一不足があれば旧サーバーから再取得します。
移行漏れがあるとサイトが正しく表示されなかったり機能が動作しなかったりします。
焦らず慎重にチェックしてください。

新環境でのサイト動作確認

データ移行が完了したら、新サーバー上でサイトが正常に動いているか確認します。
現在ドメインのネームサーバーは旧サーバーを指したままなので、そのままでは新サーバー上のサイトを直接確認できません。確認する方法として以下があります。

  • hostsファイルを利用: パソコンのhostsファイルにドメインと新サーバーのIPアドレスを一時的に記載する方法です。
    これにより自分のPCだけ新サーバー上のサイトにアクセスできるようになります。
    知識がある方はこの方法で事前確認すると良いでしょう。
  • 一時URL・プレビューURL: サーバー提供会社によっては、ドメインを切り替えなくてもサイトをプレビューできるURLを提供しています(例:エックスサーバーの「動作確認URL」機能)。
    これを利用すれば、ブラウザで新サーバー上のサイト表示を確認できます。
  • ローカル環境への復元: 上級者向けですが、ローカルPC上に一時的にWordPress環境を作り復元する方法もあります。
    ただし手間がかかるため、上記いずれかの方法で十分でしょう。

チェックポイント: 新サーバー上のサイトに管理者としてログインし、ページ遷移や記事表示、プラグインの機能など一通り動作をテストします。
パーマリンク設定が原因で404エラーが出る場合は管理画面からパーマリンク設定を再度保存すると改善することがあります。
また、テーマやプラグインの一部にホスト環境固有の設定が必要なケースもあります(例えばキャッシュ系プラグインやセキュリティプラグインの設定)。
エラーメッセージが出る場合は内容を確認し対処してください。
基本的にファイルとDBを正しく移行できていれば、旧サイトと同じ画面が再現されるはずです。
ここで問題があれば、ネームサーバーの切り替えは行わず原因を究明しましょう。
問題解決まで旧サーバーのサイトをそのまま稼働させておけば、閲覧者への影響はありません。

ドメインのネームサーバー変更(DNS切り替え)

新サーバー上でサイトが問題なく動作することを確認できたら、ドメインのネームサーバー(NS)設定を新サーバーに向ける作業を行います。ネームサーバーとはドメインに紐づくWebサーバーの所在を指し示すDNS設定です(ドメインの住所録のようなもの)。
この設定を変更することで、インターネット上でそのドメインにアクセスしたとき参照されるサーバーが旧→新に切り替わります。

ネームサーバーの変更は、ドメインを管理しているサービス(レジストラ)の管理画面から行います。
具体的には、レジストラの管理画面で対象ドメインの設定を開き、新サーバー会社が指定するネームサーバー情報(通常「ns1.example.com」のようなアドレスが複数)を入力して保存します。
例としてエックスサーバーの場合、ns1.xserver.jp等の情報を3~5つ設定する形になります。
ConoHaやさくらインターネット等でもサポートサイトにネームサーバー情報が案内されていますので参照してください。

ネームサーバー変更後、インターネット上に設定が行き渡るまで数時間から最大48時間程度かかる場合があります。
この間は旧サーバーと新サーバーのどちらにアクセスが届くか不安定な状態になります。
しばらくは世界中のDNSが更新されるのを待ちましょう。
切り替え直後は人によって旧サイトが見えたり新サイトが見えたりすることがありますが、時間経過とともに新サーバーに統一されます。

注意: ネームサーバーの切り替えを忘れると、せっかく移行したのに引き続き旧サーバーが参照されてしまい、いつまで経っても新サーバーに切り替わりません。
サイト移転時によくあるミスなので注意してください。
また、ネームサーバー変更後は旧サーバー上のサイトには基本的にアクセスされなくなりますが、完全に切り替わるまで少し間があるため旧サーバー側にも新サーバーと同じデータを置いたままにしておくと安全です
理想的には、新旧両サーバーで同じサイトが表示できる状態にしてからネームサーバーを変更すると、切り替え中も常にサイトが表示され続けます。
切替タイミングまで両方稼働させておけば「見る人によって旧サイトが見えてエラーになる」といった事態を防げます。

移行完了後の最終チェックと旧サーバーの扱い

ネームサーバー変更後、あなたの環境でも新サーバー上のサイトが表示されるようになります。サイト全体を再チェックし、リンク切れやレイアウト崩れ等がないか確認しましょう。
特に画像が表示されない場合はパスの問題やアップロード漏れが考えられます。問題があれば速やかに対処します。

また、移行完了後は旧サーバー上のサイトにアクセスが来なくなっているかも念のため確認してください。
アクセスログを見るか、旧サーバー上のサイトを一時停止するなどして、既に参照されていないことを確かめます。
問題なければ、旧サーバーの契約を解約します(ただし念のためデータは手元にバックアップを保管)。
繰り返しになりますが、最低でも移行完了後数週間~1か月は旧サーバーを並行稼働させ、検索エンジンのクローラー来訪やユーザーアクセスに問題が出ないか見ると安心です。
すべて順調であれば旧環境は不要となるため契約終了手続きを行いましょう。

3.SSL証明書の再設定(HTTPSの引き継ぎ)

SSL証明書とは、サイトをHTTPSで暗号化通信するための電子証明書です。
近年はセキュリティとSEOの観点からほとんどのサイトでSSL化(HTTPS化)が必須となっています。
旧サイトでSSL対応していた場合、新サーバーでも同じドメインでSSL証明書を設定する必要があります。

多くのレンタルサーバーでは、無料のSSL証明書(Let’s Encrypt等)をワンクリックで設定できます。
例えばエックスサーバーでは、サーバーパネルの「SSL設定」から対象ドメインを選び「独自SSLをONにする」ボタンを押すだけで、自動的に証明書が発行・適用されます。
ConoHa等でもドメイン追加時に「無料SSLを利用」にチェックを入れれば自動設定されます。

もし旧サイトで有料のSSL証明書を利用していた場合、その証明書を新環境にインストールし直すか、新しく取得し直す必要があります。
証明書ファイルと秘密鍵、中間証明書などを新サーバーに設定する必要があり難易度が高いため、初心者は無料SSLに切り替えてしまう方が手軽でしょう。

SSL証明書の設定後、サイトURLが「https://~」で正しく表示できることを確認します。ブラウザで錠マークが表示されればSSLは有効です。
もし表示が崩れたり一部「保護されていない通信」と出る場合は、サイト内の画像やスクリプトのパスがhttpのままになっている可能性があります(混在コンテンツの問題)。
プラグイン等で一括置換するか、.htaccessでhttpからhttpsへリダイレクトする設定を入れることで解決できます。
ポイントは、売却サイトを引き継いだ後も訪問ユーザーにとって安全なHTTPS接続を維持することです。

4.メールアドレス設定の引き継ぎ

独自ドメインのメールアドレスを使用していた場合、その引き継ぎも忘れずに対応します。
旧サーバーで「info@○○.com」「contact@○○.com」等のメールアカウントを運用していたなら、新サーバー上で同じメールアドレスを作成し直す必要があります。
新サーバーの管理画面にメール設定の項目があるので、同じメールユーザー名とパスワードでアカウントを追加しましょう。

メールデータの移行: 引き継ぎ対象がメールアドレスのみであれば、新サーバーに同じメールアカウントを作るだけで、今後のメール受信は新環境で行われます。
ただし旧サーバー上の過去メール(受信ボックス内のメール)は自動では移行されません。
必要な場合は旧サーバーのメールデータをバックアップしておきましょう。
多くの場合、メールソフト(ThunderbirdやOutlook等)で旧メールを一括受信してローカルに保存するか、旧サーバーから提供されるエクスポート機能を使って保存します。
その後、新サーバーのメールにインポートするか、少なくともローカルに保管して閲覧できる状態にしておきます。
メール移行はサイト表示には関係しませんが、重要な顧客連絡などを失わないよう注意が必要です。

DNSのMXレコード確認: なお、ドメインのネームサーバーを変更した際にメールのMXレコード設定も新サーバー側のものに自動で切り替わっているか確認します。
通常、ネームサーバーを変更すればメールも新サーバーで受信しますが、もし外部メール(Google Workspace等)を使っている場合は、その設定もきちんと引き継ぐよう買い手と調整してください。

以上で、サイトの訪問者向けの表側だけでなく裏側のメール連絡先についても引き継ぎが完了します。こうした細かい設定は忘れがちなので、リストアップして漏れなく対応しましょう。

5.Googleアナリティクス(アクセス解析)の連携解除・引き継ぎ

売却サイトにGoogleアナリティクス(以下GA)を導入していた場合、そのアクセス解析の引き継ぎも重要です。
サイト売買ではサイト本体だけでなく、紐づくアクセス解析ツールのアカウントも買い手へ譲渡する必要があるとされています。
過去のアクセスデータもサイトの資産の一部と考えられるため、可能な限り買い手に共有しましょう。
ここでは、Googleアナリティクスの引き継ぎ方法を解説します。

買い手へのGoogleアナリティクス権限付与

まず、売り手(旧オーナー)は自身のGoogleアナリティクスで当該サイトのプロパティに買い手のGoogleアカウントをユーザー追加(権限付与)します。
買い手が指定するGmailアドレスをGAの管理画面「ユーザー管理」で新規追加し、管理者権限(編集権限以上)を与えてください。これにより買い手はそのプロパティのデータを閲覧できるようになります。追加後、買い手側でちゃんと閲覧できるか確認を取りましょう。

次に、旧オーナー(売り手)は自身のアクセス権を外します
GAではプロパティのオーナー権限を他ユーザーに委譲したら、自分を削除することで完全に引き渡すことが可能です。
ただしGAの仕様上、一度に完全譲渡できないケース(売り手のGAアカウントに複数サイトのプロパティがある場合など)もあります。
その場合、Googleが提供する「プロパティの移行」機能を使い、対象プロパティを買い手の別アカウントに移管するという方法もあります。
しかし初心者には少し難しいため、シンプルにユーザー追加→自分を削除という流れで十分でしょう。

新オーナー側でのトラッキングコード差し替え

サイトの引き渡し後は、サイトに埋め込まれているGAのトラッキングコード(ID)を新オーナーのものに変更することも大切です。
譲渡前は旧オーナーのGA測定ID(例えばUA-XXXXXXXXやG-XXXXXXXX)がテーマやプラグインに設定されていたはずです。
これを新オーナー自身のGAプロパティの測定IDに差し替えます。
方法は、Googleタグマネージャーやテーマの設定画面、もしくは直接埋め込んでいる場合はコードを書き換えます。
この作業を怠ると、引き続き旧オーナーのGAにアクセスデータが送信されてしまうことになります。
最悪、旧オーナーと新オーナー双方で二重にデータがカウントされて正確な分析ができなくなる恐れもあります。
必ず新オーナーのトラッキングIDに更新しましょう。

💡 サイト売買後は新オーナー自身のGAでデータ計測を開始するのが基本です。
ただし過去データ比較のために旧オーナーのGAプロパティも閲覧権限を残してもらうケースもあります。
契約で合意があれば、一定期間ビュー権限だけ付与してもらうと、買収後のパフォーマンス分析に役立つでしょう。

6.Googleサーチコンソールの連携解除・引き継ぎ

Googleサーチコンソール(以下GSC)もサイト運営には欠かせないツールです。こちらもサイト売買時には買い手へアカウント権限を引き継ぎます。方法はGAと似ています。

新オーナーのユーザー追加と所有者権限の付与

売り手はGSC上で該当サイトのプロパティに買い手のGoogleアカウントをユーザーとして追加します。GSC画面左下の設定(歯車アイコン)→「ユーザーと権限」から「ユーザーを追加」で買い手のGmailアドレスを入力し、フル権限で追加してください。追加後、買い手はGSCのプロパティにアクセスできるようになります。

次に、買い手がサイトの所有者の確認(オーナー権限確認)を行います。GSCではユーザー追加しただけでは「確認済み所有者」にならない場合があります。買い手は追加された状態で、プロパティの所有権を確認する必要があります。
一般的にはHTMLファイルのアップロードやDNSレコードの設定で確認しますが、既にGAのコードが新オーナーのものに差し替わっていれば、GA経由で所有権確認することも可能です。
無事に買い手が確認済み所有者になればOKです。
最後に、旧オーナーのオーナー権限を削除します。こうしてGSC上も買い手に完全に移管されます。

サーチコンソールのデータ引き継ぎに関する注意

GSCの検索パフォーマンスデータもサイトの財産です。基本的にGSCはプロパティ単位で過去16ヶ月のデータが保持されます。
新オーナーが同じプロパティを引き継げば、過去データも閲覧可能です。
ただしオーナー権限の追加では過去データは自動引き継ぎされないため、旧オーナーに事前に閲覧権限を共有してもらいデータをエクスポートしておくか、上記のようにオーナー権限を正式に譲渡してもらう必要があります。
売り手と買い手でこの点認識を合わせ、必要なら契約書にも盛り込んでおくと安心です。

以上で、Googleのアクセス解析・検索分析ツールの引き継ぎは完了です。
サイト売買ではサイト本体だけでなくこれらツールも含めて譲渡するのが原則ですので、漏れなく対応しましょう。

7.WordPress管理者ユーザーアカウントの変更

最後に、WordPress自体の管理者ユーザーアカウントの引き継ぎについて説明します。
譲渡前は売り手本人がWordPress管理者(Admin)としてサイトを運営していたはずです。
この管理権限を買い手に渡すために、ユーザーアカウント情報を変更または追加します。

管理者アカウント情報の変更

もっともシンプルな方法は、管理者ユーザーのログイン情報を買い手に引き渡すことです。
具体的には、現在の管理者ユーザー名・パスワードを買い手に教え、一旦そのアカウントでログインしてもらいます。
ログイン後、管理画面の「ユーザー」からそのアカウントのプロフィールを編集し、ユーザー名(変更不可の場合はそのまま)、表示名、登録メールアドレス、パスワードを新オーナーのものに更新します。
こうすることで、事実上その管理者アカウントが買い手のものになります。
セキュリティのため、変更が終わったら旧オーナーにも完了したことを伝えましょう(自分のアクセス権が無くなったことを確認してもらう意味でも重要です)。

別管理者アカウントの作成という方法もあります。
旧オーナーのアカウントはそのままに、新たに買い手用の管理者権限ユーザーを追加して引き渡す方法です。
買い手が無事ログインできたら、旧オーナーのアカウントを削除するか権限を下げます。
ただしこの方法だと投稿者名の引き継ぎなど細かい調整が必要な場合があります。シンプルに既存管理者を書き換える方が混乱は少ないでしょう。

管理者ユーザーのメールアドレスも必ず変更してください。WordPressからの通知メール(コメント通知やパスワード再設定など)はこのメールアドレス宛に届きます。
旧オーナーのアドレスのままだと買い手が受け取れず不便です。
また、サイトに複数ユーザーがいる場合も、必要に応じてそれぞれのアカウント情報を更新・共有します。
特にサイト上でプロフィール表示されるようなユーザー名は、買収後の体制に合わせて変更すると良いでしょう。

以上で、サイト運営に必要なあらゆる管理権限の引き継ぎが完了しました。
WordPress自体の引き継ぎは、管理者ユーザー情報さえ渡せば基本的に完了です。
ドメインとサーバー移行が済んでいれば、新オーナーはすぐに従来通りのWordPress管理画面からサイト運営を開始できます。

まとめ:引き継ぎ作業チェックリストと次の一手

本記事では、WordPressサイト売却時の引き継ぎ手順をドメイン・サーバーから細かな設定まで網羅して解説しました。
以下のチェックリストで漏れがないか最終確認してみてください。

  •  ドメイン移管
    現レジストラで移管準備(Whois情報/ロック解除/AuthCode取得)
    →新レジストラで移管申請・承認完了
  •  サーバー移転
    新サーバー契約・ドメイン追加設定完了
  •  サイトデータ移行
    旧サーバーからファイル+DBバックアップ取得
    →新サーバーへアップロード/インポートしサイト復元
  •  動作確認
    新環境でサイト表示と機能を確認、問題なし
  •  DNS切替
    ドメインのネームサーバーを新サーバーに変更
  •  SSL設定
    新サーバーで独自SSL証明書を設定(HTTPS化)
  •  メール移行
    独自ドメインのメールアカウントを新サーバーで再作成、旧サーバーのメールデータも必要に応じてバックアップ
  •  アクセス解析移行
    Google Analyticsの権限譲渡・トラッキングID差し替え、Search Consoleの権限譲渡
  •  管理者情報変更
    WordPress管理者ユーザーのログイン情報を買い手用に変更
  •  旧サーバー解約
    一定期間並行稼働後、旧環境を解約

上記をすべて完了すれば、買い手は新しい環境でサイト運営をスムーズに引き継げる状態になります。
初めての方には大変に思えるかもしれませんが、本記事の手順に沿って進めれば対応できるはずです。
万一不安や不明点があれば、レンタルサーバー各社のサポートページや公式ドキュメントも参考にしてください。
主要サーバー会社(エックスサーバー、ConoHa、さくらなど)のサイトには、WordPress移行やドメイン移管に関する詳細マニュアルが掲載されています。

サイト売却後のアドバイス: サイトの引き継ぎが完了したら、新オーナーは早めにサイトマネタイズに関する設定(アフィリエイトIDや広告タグの差し替えなど)も自分名義に変更しましょう。
例えばアフィリエイトのトラッキングIDやGoogleアドセンスの広告コードなど、前オーナーのIDのままだと収益がそちらに入ってしまいます。
これらも忘れず新オーナーのIDに置き換えてください。

以上が、WordPressサイトを引き継ぐ際の一連の流れです。
手順をしっかり踏めば、初めての方でもスムーズに移管を進めることができます。
とはいえ、売却や引き継ぎは一度きりの経験になることも多く、「このやり方で本当に大丈夫だろうか」「買い手とのやりとりで抜けがないか」と不安になる場面もあるかもしれません。
そんなときは、売買実績が豊富なプラットフォームを利用するのもひとつの手段です。
たとえばM&Aクラブでは、契約書の作成支援や本人確認制度に対応しており、
実務に不安のある方でも、安心して取引を進めることができます。

WordPressサイトの売却を本格的に進めるなら、こうしたサービスも上手に活用しながら、納得のいく取引を目指しましょう。

以上、WordPressサイトの引き継ぎ完全マニュアルでした。
適切な手順で大切なサイトを次のオーナーへ引き渡し、円滑なサイトM&Aを成功させましょう。お疲れ様でした!

WordPressサイトの売却先を探すなら

WordPressサイトの引き継ぎが完了したら、次は信頼できる相手との取引が大切です。
「M&Aクラブ」なら本人確認済みユーザーとのやりとりができ、
契約書の発行支援など、安全な取引を後押しする仕組みも整っています。

M&Aクラブで売却先を見つける

タイトルとURLをコピーしました