サイト売却の交渉を進めるにあたり、NDA(秘密保持契約)の締結は欠かせません。
NDAとは交渉で知り得た機密情報を外部に漏らさないことを約束する契約で、サイト売買の取引でも売り手・買い手間で交わされます。
サイトのアクセス解析データや収益情報など、機密性の高い情報を開示する必要があるため、万が一情報が流出するとビジネス機会の損失や信用低下など大きな問題に発展しかねません。
こうしたリスクを防ぎ、安心して交渉を進めるためにNDAを締結する意義は非常に大きいです。
この記事では、サイト売却を検討している売り主向けに、サイト売買におけるNDAの目的や注意点を具体的に解説します。
NDAに盛り込むべき項目や契約時のチェックポイント、サイトの種類による違いなど、実践的なポイントを網羅しています。
大切なサイトを安心して売却するために、ぜひ参考にしてください。

NDAとは?サイト売買(M&A)でNDAが重要な理由
NDA(秘密保持契約)とは、取引過程で開示された秘密情報を第三者に漏らさないようにする契約のことです。簡単にいえば「交渉で得た情報を外部に漏洩・悪用しない」という約束事であり、英語のNon-Disclosure Agreementの略称でNDAと呼ばれます。
サイト売買の場面では、売り手がサイトの詳細なデータを買い手に提供し、それを元に検討を進めるケースがほとんどです。
しかし、その機密情報が外部に漏れれば、売り手にとって大きな損害リスクとなり得ます。
サイト売買でNDAが重要な理由は、主に次のとおりです。
安心して詳細情報を開示するため
NDAを結ぶことで、売り手はサイトの収益データやユーザー情報など詳細を安心して開示できます。
契約によって相手の守秘義務が明文化されるため、買い手も慎重に情報を取り扱わざるを得ず、両者が安心して交渉を進められます。
NDAなしで情報共有すると、情報漏洩や不正利用のリスクが高まり、ビジネス上の競争力や信用を失う恐れがあります。
収益データ・顧客情報など重要情報の保護
サイトの月次収益やアクセス数、顧客リストなどは機密性が高く、競合他社に知られると不利になりかねません。
NDAによりこれら重要データの外部流出を防止できます。
また、情報を受け取った買い手は契約上その情報を目的外に利用できないため、自社の営業に流用されたり不正にコピーされたりすることも防げます。
売却検討の事実が漏れるリスク回避
サイトを売却予定である事実そのものも、場合によっては機密情報です。
社員や取引先、お客様に知られると業務に支障が出たり、買い手側の企業にも影響が及ぶ可能性があります。
NDAを締結し「交渉している事実や内容を第三者に公表しない」と取り決めておくことで、売却の意図が外部に漏れるリスクを減らせます。
このようにNDAには売り主の大切な情報と取引自体を守る目的があります。具体的にどのような情報を守るべきか、次章で見ていきましょう。
サイト売却時にNDAが必要とされる理由
では、なぜサイト売却にわざわざNDAを締結する必要があるのでしょうか?
主な理由は次のとおりです。
機密情報の保護
サイト売却では、サイトの収益データや顧客リスト、SEO戦略、ソースコードなど様々な機密情報を共有する場面があります。
それらが第三者に漏れると、競合にビジネスノウハウを盗用されたり、利用者の信頼を損ねたりする恐れがあります。
NDAを締結しておけば、共有した情報の取り扱い範囲を限定し、情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
例えば、NDAで「情報を社内の特定メンバーにしか共有してはならない」「目的外利用は禁止」など取り決めておけば、受け取った側は勝手な二次利用や拡散ができなくなります。
万一違反すれば損害賠償請求などの責任追及も可能になるため、情報漏洩への抑止力として機能します。
交渉の前提としての信頼醸成
NDAを結ぶこと自体が「お互い秘密は守ります」という宣誓になるため、当事者同士の信頼関係を築くきっかけになります。
売り手からすれば「この買い手はしっかりNDAを結んでくれるから信頼できる」と感じられますし、買い手も「重要情報を得る以上責任を持とう」という意識が生まれます。
実際、サイト売買仲介の現場でも買い手から早めにNDA締結を打診すると交渉が有利になるとも言われます。
NDAがあることで安心して詳細な情報開示や議論ができ、結果的にスムーズな交渉につながります。
売却計画の漏洩防止
売り手にとって、自社サイトを売却検討中である事実が外部に漏れるのは避けたいものです。
従業員や取引先、ユーザーに知られてしまうと、不要な混乱や信用不安を招きかねません。
秘密保持契約によって売却プロセス自体を秘匿できるため、交渉が不成立に終わった場合でも風評被害を抑えられます。
特に個人が運営するサイトの場合でも、「サイト売却を検討している」という噂が立てば広告主やユーザー離れにつながる可能性もあります。
そうしたリスク管理の観点からも、NDA締結はM&Aプロセスの必須ステップとされています。
NDAに盛り込むべき項目
サイト売買におけるNDAでは、どの情報を秘密情報として扱うかを明確に定義します。
売却交渉で売り主が開示する主な情報と、NDAで秘密情報として扱うべき具体例を挙げます。
契約の目的
何のために情報を開示し合うのか、その目的や対象となる取引を明確にします。例:「サイト売却の可能性についての協議のため」など。契約の目的を限定しておくことで、受領者は提供された情報をその目的以外に使ってはいけないことが明確になります。
秘密情報の定義
どの情報を「秘密情報」として扱うかを定義します。
自社にとって秘密に当たる情報範囲は企業ごとに様々なため、NDAできちんと定義する必要があります。
一般には「開示者が受領者に提供した一切の情報」を秘密情報と定めるケースが多いですが、必要に応じて具体例や形式(書面・口頭問わず等)も記載します。また、「秘密情報に該当しない情報」も明示しておきます。典型的な除外例として、
- 開示前に既に知っていた情報
- 第三者から適法に取得した情報
- 公開時点で既に公知の情報
- 受領者が独自に開発・入手した情報
- 開示後に受領者の責によらず公知となった情報
などが挙げられます。このように除外事項を定めておくことで、本当に保護すべき情報に絞って守秘義務を課すことができます。
サイト売買では一般的に以下の項目が秘密情報として挙げられます。
- アクセス・トラフィック情報
- 収益・財務データ
- 会員情報・顧客データ
- サイト運営のノウハウ・戦略
- 交渉過程の情報や取引条件
秘密情報の取り扱い・義務範囲
受領者が負う守秘義務の内容を定めます。基本的には「秘密情報を第三者に一切開示しない」「秘密情報を本契約の目的以外に利用しない」が中心です。
加えて、必要最低限の範囲でのみ情報を利用・複製できることや、情報漏洩の懸念がある場合には速やかに開示者へ報告する義務、複製物には原本と同等の管理を行うこと、契約上の権利義務を第三者へ勝手に譲渡しないこと等を規定します。
また、秘密情報を共有できる相手も制限します。
例えば「受領者の社内関係者・代理人・専門アドバイザーなど業務上知る必要がある者にのみ開示可能」とし、それらの者にも同等の守秘義務を遵守させる旨を定めます。
これにより、受領者が弁護士や税理士などに相談する必要がある場合でも対応できつつ、情報拡散を最小限に留められます。
秘密情報の返却・廃棄
開示者が要求した場合や契約終了時に、受領者が提供された資料やデータを返却または廃棄する義務について定めます。
例えば「書面やデータ等すべての秘密情報を、交渉終了後〇日以内に返却または完全に破棄すること」といった条項です。
これにより、交渉が終わった後も機密情報が手元に残らないようにし、情報の後々の漏洩リスクを防止できます。
違反時の責任(損害賠償など)
もし契約違反(秘密漏洩や目的外利用)が発生した場合の責任と救済措置を規定します。
通常は「違反により生じた損害を賠償する責任」を明記し、必要に応じて差止請求(漏洩の禁止や拡散停止を求める)に触れることもあります。
さらに具体的に、立証が難しいことを考慮して違約金(最低賠償額)を定めるケースもあります。
違反時の取り決めを事前に決めておくことで、万が一の際に法的措置を迅速に講じやすくする効果があります。
その他の基本項目
上記以外にも、契約の解除条件(どちらかが契約を終了させる場合の手続き)や準拠法(この契約にどの国・地域の法律を適用するか)、管轄裁判所(トラブル発生時にどの裁判所で争うか)などを定めます。
例えば「本契約に関する紛争は○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」といった条項です。
もっとも、サイト売買の当事者が同じ国内にいる場合は日本法・相手本店所在地の裁判所とするのが一般的でしょう。
このような項目は契約書の定型的な最終条項ではありますが、万一裁判になった場合の大事な取り決めですので省略しないようにします。
弁護士監修の契約書が発行できるM&Aクラブ
今すぐチェック!NDA締結時に売り主が確認すべきポイント
NDAを締結する際、売り主の立場で必ずチェックしておきたい条項があります。以下に、実践的なチェックポイントを挙げて解説します。
秘密情報の定義
契約書上で「何を秘密情報とするか」が明確に定義されているか確認しましょう。自社サイトに関するどの情報が秘密に当たるのかを具体的に決めておくことで、外部に出したくない情報を確実に保護できます。
例えば、「本件に関連して提供・開示されたすべての情報」と包括的に定義しつつ、特に事業や財産など重要事項は例示されていると安心です。
秘密情報の使用目的(利用目的の限定)
開示した情報がサイト買収の検討以外の目的に使われない旨が定められているか確認してください。
NDAには通常「提供された秘密情報は本取引の目的以外に利用しないこと」といった条項が盛り込まれます。
これにより、買い手が得た情報を使って競合ビジネスに利用したり、他の目的に流用することを防げます。
目的外利用の禁止はNDAの中核となるポイントです。
再開示の可否と範囲
買い手が受け取った情報を第三者に再開示できる範囲についてもチェックしましょう。基本的には「いかなる第三者にも秘密情報を開示しないこと」と規定されますが、実務上、買い手が社内の関係者や顧問弁護士・税理士などに情報を共有する必要が生じる場合もあります。
そのため、多くのNDAでは
「受領者の関係者(役員・従業員・専門アドバイザーなど)に業務上必要な限り開示することは可能。
但し、その場合は当該関係者にも本契約と同等の秘密保持義務を負わせること」
といった条件付きで認めています。
売り主としては、再開示を許す場合でも範囲が限定され、事前通知を行うよう規定されているかを確認しましょう。
サイトの種類によるNDA内容の違いはある?
サイト売買におけるNDAの基本的な枠組みは、サイトの種類に関わらず共通です
いずれの場合も「秘密情報の定義」「守秘義務の内容」「例外事項(既に公知の情報は対象外など)」「契約期間や終了後の取り扱い」など、NDAに盛り込むべき条項自体はほぼ同じです。
ただし、開示される情報の種類に応じて実務上の着眼点が多少異なることがあります。
例えば、アフィリエイトサイトや広告収入メインのブログ売買の場合、機密の中心はアクセス数や検索流入キーワード、広告収益データなどになります。
そのためNDAでもこれらが秘密情報に含まれることを確認し、特に収益情報の目的外利用禁止を厳密に定めることが重要でしょう。
一方、ECサイト(ネットショップ)の売買では顧客の個人情報や仕入先情報、在庫データなどが含まれるため、NDA締結前後の個人情報の取り扱いに注意が必要です(可能であれば個人が特定されない統計情報の形で開示し、詳細データは成約段階まで伏せるなどの配慮も検討されます)。
会員制のウェブサービスやオンラインコミュニティサイトの場合、会員リストや課金情報、サービスのソースコードや内部資料などが機密情報となり得ます。
こうしたサイト特有の重要データも、契約上しっかり秘密情報として網羅するようにしましょう。
まとめると、NDA自体の雛形はサイト形態にかかわらず大きくは変わりませんが、サイトごとに何が機密の核心かを売り主自身が把握し、それが漏れない契約内容になっているか確認することが大切です。
サイトの種類ごとに異なる機密情報のポイントを意識して、NDAを有効に活用しましょう。
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NDAの内容をゼロから自分で作成するのが不安な場合や、契約書の取り交わしをスムーズに行いたい場合は、専門サービスの活用も検討できます。
例えばサイト売買プラットフォームのM&Aクラブでは、弁護士監修のNDA付き契約書発行サービスを提供しています。
これは所定の条件(売り主・買い主双方の本人確認済み、取引額が一定以上など)を満たしたユーザーに対し、サイト譲渡用の契約書ひな型を無料で発行してくれるサービスです。
契約書には秘密保持条項(NDA)が組み込まれており、電子契約方式でオンライン上ですべて完結するため手間がかかりません。
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安心して交渉をスタートしたい方は、ぜひご活用ください。
M&Aクラブのようなサービスを利用すれば、専門家がチェックした契約書をベースに交渉を進められるので、法律面の抜け漏れを心配する必要が減ります。
実際の取引では、事前にNDAを締結した上で詳細情報を開示し、条件合意後に売買契約へと進む流れが一般的です。
最初のNDA取り交わしから契約締結・決済までワンストップでサポートしてくれるサービスを活用し、安心安全にサイト売買を進めましょう。
まとめ
サイト売買におけるNDAのポイントと注意点について解説しました。
売り主にとって大切なのは、自分のサイトの価値を支える情報を守りつつ円滑に取引を進めることです。
適切なNDAを結び、信頼できる買い手との交渉に臨めば、機密情報を守りながら納得のいくサイト譲渡を実現できるでしょう。
これからサイト売却を検討する方は、本記事の内容とNDAの活用を踏まえて、安全で有利な売却にぜひお役立てください。