サイト売買の現状とリスク
日本ではブログやWebサービスを運営して収益化する人が増えています。
こうしたサイトを第三者に売却・購入する「サイト売買(サイトM&A)」も活発で、2024年の成約件数が増えたことで専門サービスが多数登場しました。
しかし売買はインターネット上で完結することが多く、面談を行わずに契約まで進む場合も多いため、対面取引よりも確認が雑になりがちです。
売主は少しでも高く売りたい心理から不利な情報を開示しないこともあり、買主が十分な調査をしないまま購入すると後でトラブルが発生します。
この記事では、よくある失敗例や原因を整理し、リスクを抑えるためのポイントをまとめます。
掲載・取引数No.1(2024年)
サイト売買ならM&Aクラブ

掲載代行サービスなど、初心者でも安心できるプラットフォームです。安心安全にサイト売買を行えます。
サイト売買で起こる主な失敗例(買主側)
運営経験がないまま購入して失敗する
副業目的や投資目的でサイトを購入したものの、運営に必要な知識や労力を把握しておらず、更新できずに価値が下がるケースが代表的です。特に専門性が高いジャンルやニッチな市場では外注ライターの確保が難しく、運営にかかる手間やコストが予想以上にかかることがあります。
買収前にそのサイトがどのように集客し収益を得ているか理解し、自分が運営を継続できるか検討することが重要です。中長期的にメンテナンスが必要な記事が多い場合は、その工数も考慮して購入判断をしましょう。
運営コストを過小評価する
サイト運営にはサーバー費用・ドメイン更新料・外注費・広告費などのコストが掛かります。更新を停止しているサイトでは運営費用が収支情報に含まれないことがあり、個人運営の場合は人件費を計上していないこともあります。
実際に購入したサイトの更新やメンテナンスが想定より大変だったという事例も多く、専門性の高いコンテンツではライターの確保や監修費が必要になります。買主はサーバー料金や外注費に加えて自分の作業時間を時給換算し、総コストを見積もる必要があります。
売上・アクセス数の虚偽報告に注意
売主が提示する月間売上やページビューが実際より高く見せられるケースがあります。
例えば、交渉時に「月間売上15万円・PV30万」と説明されたサイトを購入したところ、実際の数値は1/3程度だった例が挙げられます。
原因には売主の虚偽報告や最高月の数値だけを提示する行為、直近の急落を隠すなどがあり、買主はGoogleアナリティクスの画面共有や管理権限の一時付与を依頼し、ASP報酬のスクリーンショットを数か月分確認するなどデータの裏付けを取るべきと指摘されています。
サイト移行・譲渡での技術的トラブル
サーバー移転やドメイン移管で移行手順を誤ると、サイトが長時間ダウンし検索順位が落ちたり、データが消失することがあります。WordPressのバージョン違いやサーバー設定の違い、DNS設定ミス、リダイレクト忘れなどが原因です。
移行に失敗すると機会損失や取り返しのつかないリスクがあります。買主は移行の技術を十分に持っているか確認し、専門業者へ依頼する、事前にバックアップを取得する、テスト環境で検証するなどの対策が必要です。
コンテンツ盗用や競合サイトの存在
購入したサイトのコンテンツが他サイトからのコピペだったり、画像やデザインが盗用されていたケースがあります。コンテンツが盗用されたサイトを購入すると後に正当な権利者から訴えられるリスクを抱えてしまします。
また、譲渡後も売主が同じようなサイトを運営し、SEOで競合してしまう例もあり、その場合は競業避止条項の違反に該当します。購入前にコンテンツをコピペチェックツールで調べたり、売主に競合サイトの有無を確認し、契約書に競業避止条項や表明保証を盛り込むことが重要です。
売上やアクセス情報の変動・SEOリスク
売上やアクセスが開示情報と異なるのは、虚偽だけでなくGoogleアルゴリズムの変動やブラックハットSEOによる手動ペナルティが原因の場合もあります。買主が引き継いだ後に急に順位が下がったりアクセスが減少することは外的要因であり、Googleアナリティクスやサーチコンソールの権限を確認してもらい、検収期間を長めに設定して検証することが推奨されています。
ブラックハットSEOで一時的に上位表示しているサイトはアルゴリズム更新で流入が急減するリスクが高く、価格が安い分リスクを受け入れられるか判断する必要があります。また、過去に別ドメインで運営していたサイトで旧ドメインへのリダイレクトを忘れていると、SEO評価を引き継げないため注意が必要です。
収益源の依存・アフィリエイト案件の終了
主要収益源が特定のアフィリエイト案件や広告案件に依存しているサイトでは、案件の終了や報酬単価の下落で利益が激減するリスクがあります。
複数の広告主やASPに収益源が分散されているか、季節要因や広告主の方針変更に影響されないか確認しましょう。
また、特定の案件に依存する商標特化サイトは案件終了時に他の案件へ乗り換えが難しいため、代替案件の検討が必要です。
個人間取引や前払いによる詐欺
エスクローサービスを利用せず個人間で取引した場合、代金を前払いしたのにサイトが譲渡されなかったり、譲渡したのに代金が支払われない詐欺被害が報告されています。資金を先に振り込んでしまい売主と音信不通になった例もあり、信頼できる仲介業者やエスクローサービスを利用することが推奨されています。
サイト売買で起こる主な失敗例(売主側)
売却タイミングや価格設定を誤る
サイトを売る際、もっと高く売れるかもと交渉に時間をかけ過ぎて、最初に購入意思を示していた買主を逃すケースがあります。サイト掲載直後が最も注目されるため、独自性や相場を考慮し適切な価格で早期に売却することが重要です。
また、相場を把握せず安売りしてしまい後で後悔する失敗もあります。自動査定サービスや成約事例を参照して相場感を掴み、相場よりやや高い価格で出して反応を見ながら調整する方法が推奨されています。
交渉段階で情報を抜き取られる
買主が購入するふりをして、サイトの重要な情報を詳細に聞き出し、その情報を用いて模倣サイトを作られるケースがあります。成果が出ているサイトほど情報を抜き取られるリスクが高いため、交渉段階に応じて開示情報を限定し、NDAの締結や交渉相手の絞り込みなどの対策が必要です。
移行・ドメイン移管の失敗
売主自身が移行を手伝わなかったり、契約するサーバーがドメイン移管禁止期間内であったため移管ができずにトラブルになることがあります。買主がサーバーやドメインの仕様を把握していない場合にも移行失敗が起こります。
事前にサーバーやドメインの移管が可能か確認し、必要に応じて移行代行サービスの利用を検討しましょう。
代金未払いや分割払いのリスク
プラットフォームを介さず知人間で取引すると、代金が入金されなかったり分割払いの途中で支払いが滞ることがあります。サイト売買は基本的に一括払いが多く、リスクの高い買主とは取引しない方が賢明とされています。
どうしても分割で取引する場合は、買主の信用情報を確認し、全額支払いが済むまでドメイン移管を行わないなど契約でリスク管理を行います。
売却後のサポート負担や競業避止義務
初心者の買主に譲渡した場合、WordPressの使い方やサーバー設定など基本的な質問が多数寄せられ、想定以上のサポート負担になったという声があります。サポート範囲と返信頻度を契約書に明示し、サポート工数を価格に織り込むことが推奨されます。
また、譲渡後に類似サイトを運営すると競業避止義務違反とされ、訴訟に発展するケースもあります。競業避止期間や範囲を契約書に明示し、既に運営しているサイトがある場合は買主に事前告知して了承を得ましょう。
契約の不備・認識の食い違い
売却契約に特別条項や表明保証が適切に盛り込まれていないと、買主から買い戻しを迫られたり、譲渡資産が漏れて損害賠償を請求されることがあります。契約書の不備や重要事項の未開示が原因で売却が白紙になる事例もあり、専門家監修の契約書を使用し、重要事項は事前に開示してデューデリジェンスに誠実に対応することが重要です。
また、コミュニケーション不足により「言った言わない」の認識の違いが生じやすく、取引記録を残す仕組みを利用することが推奨されています。
失敗の背景にある共通の課題
サイト売買の失敗事例として最も多いのは「運営能力不足」と「見積・確認不足」で、買主側に原因がある事例が多いことが示されています。
対策別に見ると、契約書の整備やサービス機能の活用でリスクの半分以上を減らせると指摘され、買主側のデューデリジェンスや運営能力確保も重要であると述べています。表明保証条項や競業避止条項など契約上の保護と、エスクローサービスなど安全な決済方法の利用によって取引リスクを大幅に低減できます。
失敗を防ぐためのポイント
以下では、買主と売主の双方が取引前にチェックすべきポイントを整理しました。
運営経験不足への対策
代表的な失敗例・リスク:運営経験なしで購入して運営不能
防止策:事前にサイト運営の知識を身につけ、ジャンルの専門性や必要工数を理解する。自分でブログやメディア運営を経験してから購入を検討する。
見積・確認不足への対策
代表的な失敗例・リスク:運営コスト・在庫・資産の見積もり不足
防止策:サイト運営に必要な費用を自分で算出し、売上・アクセスデータや在庫・資産の明細を資料で確認する。専門家によるデューデリジェンスを行う。
虚偽情報やデータ不足への対策
代表的な失敗例・リスク:売上・PVの虚偽、盗用コンテンツ、ブラックハットSEO
防止策:Googleアナリティクスやサーチコンソールの権限の一時付与、ASP報酬のスクリーンショットなど証拠資料を確認する。コピペチェックやBacklink分析ツールでコンテンツとリンクの品質を調べる。契約書に表明保証を盛り込む。
移行失敗・技術不足への対策
代表的な失敗例・リスク:移行やドメイン移管の失敗
防止策:移行前にバックアップを取得し、移転計画を文書化。技術に自信がなければ専門業者へ依頼。移行はトラフィックの少ない時間帯に行う。
取引・支払いトラブルの防止
代表的な失敗例・リスク:前払い詐欺や分割払いの滞納
防止策:第三者のエスクローサービスや仲介業者を利用し、安全な決済方法を選ぶ。代金支払いとサイト譲渡のタイミングを契約書に明記する。
コミュニケーション不足・認識齟齬の防止
代表的な失敗例・リスク:認識の齟齬・サポート負担
防止策:重要事項やサポート範囲を具体的に文章化し、記録が残るツールでやり取りする。初心者相手の場合はサポート範囲を限定し価格に反映させる。
競業・契約違反の防止
代表的な失敗例・リスク:競業避止違反や買戻し請求
防止策:契約書で競業避止期間や範囲を明確に定め、必要に応じて法律専門家に相談。買戻し特約を入れないか、入れる場合は条件を限定する。
SEO・アルゴリズム変動への対策
代表的な失敗例・リスク:アルゴリズム変動や手動ペナルティ
防止策:コンテンツの質やE-E-A-Tを評価し、外部リンクの品質をチェックする。中古ドメインやブラックハットSEOが使用されていないか確認する。変動リスクを考慮した投資計画を立てる。
まとめ:失敗を減らすために
サイト売買には、運営能力不足や見積もり不足、虚偽情報、技術的な移行トラブル、支払いトラブルなどさまざまなリスクがあります。
運営能力や確認不足が主な原因であり、買主側のリスクが大きいと考えられます。
これらのリスクは、入念なデューデリジェンスや適切な契約書、エスクローなど安全な取引手段の活用、専門家への相談によって大幅に減らすことができます。
取引はスピーディに行うことがサイト売買のメリットの一つですが、確認を怠ると後で大きな損失につながります。買主は自らデータを確認し、運営スキルや資金計画をしっかり立てましょう。売主は適切な価格設定と情報開示、契約内容の整備によってトラブルを避けることができます。
双方がリスクを正しく理解し、誠実なコミュニケーションと安全な手続きを取ることで、サイト売買を成功に導くことができるでしょう。