サイト売却において発生することの多い手続きの一つが「ドメイン移管」です。
ドメインはウェブサイトの“住所”のようなものであり、売り手から買い手へ運営権を正式に引き継ぐためには、ドメインそのものの所有権移転が必要です。
ただし、移管手続きは管理会社(レジストラ)ごとに仕様や画面構成が異なり、慣れていないとトラブルや移管失敗のリスクもあります。
本記事では、ドメイン移管(ドメイントランスファー)とは何か、基本的な流れや方法、注意すべきポイントを初心者向けにわかりやすく解説します。
また主要なドメイン管理会社(レジストラ)ごとの具体的な移管手順もまとめているので、この記事さえ読めばドメイン移管ができるレベルの実用知識が身につきます。
ドメイン移管とは何か?サーバー移行との違いも解説
ドメイン移管とは、現在利用しているドメインの管理会社(レジストラ)を別の会社に変更することです。
平たく言えば「ドメイン管理会社の引っ越し」にあたります。
たとえば、今までドメインを管理会社A社で管理していたものを、B社に乗り換えて引き継ぐイメージです。
ここで注意したいのは、サーバー移行(引っ越し)と混同しやすい点です。
ドメイン移管はあくまでドメインの契約管理先を変える手続きであり、Webサイトのデータやサーバーそのものを移動する作業ではありません。
現在のレンタルサーバーとドメイン管理会社が別会社であれば、サーバーを乗り換えてもドメイン移管は不要で、ネームサーバー(DNS)の設定変更だけでサイト移転は完了します。
一方、サイト売却の場面では「売り手名義のドメインを買い手のアカウントへ移す」必要があり、契約元と移管先のレジストラ間でドメインの管理権を移転する手続きを行うことになります。
このようにドメイン移管は、サイト譲渡やドメイン管理会社の乗り換え時に発生する重要なステップなのです。
なお、売り手と買い手が同じドメイン管理会社を利用している場合(例:どちらもお名前.com)、レジストラ間でのドメイン移管手続きは原則として不要です。
同一レジストラ内であれば、名義変更やアカウント間でのドメイン移行という方法で所有権の譲渡が可能で、移管の60日ルールも回避できます。
詳しくは別記事『同一管理会社内でドメインを譲渡する方法』をご参照ください。
ドメイン移管の一般的な流れ・手順
どの管理会社でも、移管の基本的なフロー自体は共通しています。
一般的には以下のような順序で手続きが進みます。
-
売り手が現在の管理会社にログインする。
ドメインの設定管理画面にアクセスし、移管手続きを開始できる状態にします。 -
ドメイン移管ロック(Transfer Lock)を解除する。
不正な移管を防ぐため、通常ドメインはレジストラロックという保護状態になっています。
移管するにはこのロックを解除(オフ)する必要があります。
※設定メニュー名は各社で異なりますが、「移管ロック解除」「レジストラロック解除」等の項目があります。 -
WHOIS情報を最新の状態に更新する。
特に登録者のメールアドレスが現在有効なものか確認してください。
移管時にはWHOISに登録されたメール宛に承認メールが届くため、古いメールアドレスのままだと承認手続きができません。
氏名や住所など登録情報に誤りがある場合も移管審査で拒否される原因となるため注意しましょう。 -
AuthCode(認証コード)を取得する。
AuthCode(オースコード)とはドメイン移管に必要な認証キーのことで、ドメインに割り当てられた英数字のコードです。
現在の管理会社の画面上で発行または確認できます。
※JPドメインの場合はAuthCodeは発行されません。JPドメイン移管では、移管申請後に現行の管理会社での承認作業が必要となる点が特徴です。 -
買い手にAuthCodeを共有する。
発行したAuthCodeは買い手(移管先アカウントの所有者)に伝えます。
安全な手段で漏れないよう共有しましょう。 -
買い手が移管先(新しいドメイン管理会社)で移管申請を行う。
買い手側のレジストラの管理画面で「他社からドメイン移管して受け入れる」ための申請手続きを行います。
この際、上記AuthCodeやドメイン名などを入力します。
移管先で所定の移管料金(後述)を支払う必要がある場合もあります。 -
承認メールを確認し、承認手続きを行う。
移管申請後、WHOISに登録されたメールアドレス宛にドメイン移管の承認依頼メールが届きます。
メール内の承認リンクをクリックするか、記載された手順で移管を承認してください。
※承認メールが届かない場合は迷惑メールフォルダを確認のうえ、WHOIS情報(メールアドレス)や代理公開設定を見直しましょう。 -
レジストラ間で移管処理が実行され、完了する。
承認が行われると現在の管理会社と新しい管理会社間で正式なドメイン移転処理が開始されます。
通常3〜7日程度で移管は完了し、ドメインが買い手側の管理アカウントに移ります。
※ドメインの種類や各社の対応状況によっては数週間かかる場合もあります。
また、即時に承認処理が行われる「.jp」ドメインなどでは、数時間以内に完了するケースもあります。
- 売り手が現在の管理会社にログインする。
以上が基本的な流れです。繰り返しになりますが、JPドメインの場合はAuthCodeを使わず承認プロセスが異なる点に注意してください。
いずれにせよ、「現在の管理会社での準備」→「新しい管理会社での申請」→「承認手続き」という大枠は共通しています。
初めてだと手順が多く感じるかもしれませんが、ひとつひとつ正確に対応すれば初心者でも十分に完了可能な作業です。
次章では移管の際に特に注意すべきポイントを解説します。
ドメイン移管前に確認すべき注意ポイント
ドメイン移管を安全かつスムーズに成功させるために、事前に以下のポイントを確認・対応しておきましょう。
60日ルールの確認
ドメインを取得・登録してから60日以内のものは、ICANNという国際機関のポリシーにより移管できません。 まずは移管対象ドメインの取得日を確認し、登録日から60日以上経過しているかチェックしましょう。
また、直近でドメインの名義情報を変更した場合も、レジストラによっては60日ロックがかかり移管不可となるケースがあります。 例外的に60日以内でも同一レジストラ間での名義変更(アカウント移行)なら可能なので、急ぎの場合はそちらも検討してください。
ドメイン有効期限に余裕を持つ
移管手続きは数日~1週間程度かかるのが一般的です。 そのため、ドメインの更新期限が迫っている場合は要注意です。 期限ギリギリに移管を試みると手続き完了が間に合わず、移管元レジストラ側で移管を拒否される場合もあります。
少なくとも有効期限まで1ヶ月以上の余裕を持って移管手続きを行うことをおすすめします。 もし有効期限間近であれば、先にドメインを更新延長してから移管すると安心です。
WHOIS代理公開(プライバシー保護)の解除
ドメインのWHOIS情報に代理公開サービス(プロキシ)を利用している場合、移管前に解除しておきましょう。 代理公開が有効のままだと承認メールが正しく届かない、または移管申請時にエラーになることがあります。
移管直前にはWHOIS代理公開をオフに変更し、自分のメールアドレスが登録された状態にしておくのが安全です。
DNS設定の引き継ぎに注意
移管後、一部のレジストラでは対象ドメインのDNSレコード情報(AレコードやMXレコードなど)が初期化される場合があります。 特に、元の管理会社で提供されていたDNSホスティングを利用していた場合、新しい管理会社に移った時点で設定が消えてしまい、 Webサイトが表示されなくなったりメールが使えなくなったりするリスクがあります。
これを防ぐために、事前に現在のDNS設定を控えてバックアップしておきましょう。 そして移管完了後に新しい管理会社の管理画面でDNSレコードが正しく引き継がれているか確認し、 必要に応じて同じ情報を再設定してください。
なお、ネームサーバー自体を以前から独自に設定している場合(例:Cloudflare等を利用)や、 引き続き同じネームサーバーを使う場合は基本的に影響ありません。
移管対応していないドメイン種別に注意
移管先のレジストラが、移管したいドメインの種類(TLD)を取り扱っていないケースもあります。 その典型がプレミアムドメインです。 プレミアムドメインとは人気の高い文字列で通常より高額に提供されているドメインですが、 移管先がそのプレミアムドメインを扱っていない場合は移管できません。
事前に移管先レジストラの対応TLDを確認し、該当ドメインが受け入れ可能かチェックしておきましょう。
移管費用の準備
ドメイン移管には、多くの場合1年分の更新費用が発生します。 移管先レジストラでの支払いとなり、概ね1,000〜3,000円程度が相場です(ドメインの種類によって変動)。
例えば「.com」や「.net」なら1,500〜2,500円前後、「.jp」なら1,000円台~3,000円台といった価格帯が一般的です。 これは移管完了と同時に有効期限が1年延長される更新料であり、純粋な手数料ではありません。
支払い方法(クレジットカード等)も事前に確認して準備しておきましょう。
以上のポイントを押さえておけば、移管作業中のトラブル発生リスクを大幅に減らせます。それでは次に、主要なドメイン管理会社ごとの具体的な移管手順を見ていきましょう。
管理会社別|主要レジストラのドメイン移管手順ガイド
ここでは、日本で主要なドメイン管理会社(レジストラ)ごとに、移管手続きのポイントを簡潔にまとめます。
画面の構成やメニュー名称は各社で異なりますが、基本的な流れは共通していますので、該当する管理会社の欄を参考に進めてみてください。
※詳細や最新情報は各社公式サポートもご確認ください。
■ お名前.com(GMOインターネット)
- 管理画面で対象ドメインの「ドメイン設定」→「ドメイン詳細設定」にアクセスし、ドメインの移管ロックを解除します。
- 「WHOIS情報変更」メニューで登録者メールアドレス等の情報を確認・必要に応じて更新します(承認メールを受け取れるアドレスにする)。
- 「AuthCode発行」メニューから移管用の認証コード(AuthCode)を取得します。
- WHOIS公開代行サービスを利用中の場合は代理公開をオフに変更しておきます(移管完了後に再度オンに戻せます)。
■ ムームードメイン(GMOペパボ)
- ムームードメインのドメイン管理画面から、対象ドメインの「ドメイン操作」→「移管情報表示」ページを開きます。そこで移管ロックを解除してください。
- WHOIS情報で代理公開(WHOIS代行)が「利用中」のままだと、移管申請時にエラーになることがあります。移管前にWHOIS代理公開をOFFにしておきましょう。
- 「認証コード表示」メニューからAuthCode(認証コード)を発行・確認し、そのコードを移管先の申請時に入力します。
■ エックスドメイン(エックスサーバー)
- エックスドメインでは、まずサーバーパネル内の「インフォパネル」にログインします。契約中ドメインの一覧から該当ドメインを選び、「ドメイン設定」または「詳細設定」画面でレジストラロックを解除します。
- 続いて同パネル内の「ドメイン移管申請」メニューから移管の申し込み手続きを開始します(移管先がエックスドメインの場合の手順ですが、他社へ移管する場合もロック解除とAuthCode取得が必要です)。
- なお、WHOIS情報公開代行を利用中の場合は事前に解除しておくとよいでしょう(承認メールが届かない問題を防ぐため)。
■ Google Domains(※現在はSquarespace管理)
- Google Domainsをご利用の場合(※2023年よりサービス運営はSquarespace社に移管されていますが、基本的な操作は従来通りです)、ドメイン管理画面の「登録設定」から移管用ロックを解除します。
- 同画面内にある「転送用の認証コードを取得」ボタンをクリックし、AuthCodeを発行します。発行されたコードはコピーして買い手に共有してください。
- また、DNSSEC(DNSセキュリティ拡張)を有効にしている場合、移管前に無効化しておくとスムーズです(DNSSECが有効のままだと移管エラーになる場合があります)。
■ ラッコドメイン
- ラッコドメインで買い手が受け入れる場合、ラッコドメイン側の管理画面で「他社⇒ラッコ移管」というメニューを選択します。そこで移管したいドメイン名とAuthCodeを入力して申請を行います。
- ラッコドメインでは申請時に、自動的にWHOIS情報・レジストラロック状態・有効期限・DNSSEC設定など複数の条件チェックが行われます。すべての条件がクリアになると「移管開始」ボタンが押せるようになるので、クリックして手続きを進めましょう。
- 移管開始後、登録メールアドレス宛に承認メールが届くので、リンクをクリックして承認します。これで移管処理が実行され、完了を待つだけです。
※上記の他にも、バリュードメイン、さくらインターネット等さまざまな事業者がありますが、基本的な手順は共通です。
各社ともサポートサイトに詳細マニュアルが公開されていますので、画面操作で不明点があれば参照してください。
ドメイン移管にかかる期間と費用
移管完了までの期間
一般的にドメイン移管は申請から完了まで3~7日程度かかります。
これは、承認メールへの応答やレジストラ間処理に一定の日数が必要なためです。
ただし先述の通り、JPドメインは即時承認の仕組みがあるため数時間~1日以内に完了することもあります。
また、稀にですが数週間かかるケースも報告されています。
目安として1週間経っても完了しない場合は、承認漏れがないか両社サポートに問い合わせてみるとよいでしょう。
移管にかかる費用
前述のとおり、多くのレジストラではドメイン移管時に1年分の更新料を支払います。
この費用は移管完了と同時に有効期限が1年延長される形で充当されます。
金額はドメインの種類によって異なりますが、相場は1,000円台~3,000円台です。
例えば「.com」や「.net」で1,500~2,000円程度、「.jp」なら1,000円台後半~3,000円前後が一般的な価格帯です。
移管先によってはキャンペーン価格で安くなることもあるため、事前に料金表を確認しておくと安心です。
なお、自分で移管作業をするのが難しい場合、ドメイン移管代行サービスを利用する方法もあります。
専門業者や一部レジストラが代行を受け付けており、その場合の手数料相場は5,000~30,000円程度とされています。
よくあるトラブル事例と対処法
トラブル内容 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
認証メールが届かない | WHOIS登録のメールアドレスが古い/WHOIS代理公開が有効 | 移管前にメールアドレスを最新に更新し、代理公開を解除する |
AuthCodeが無効と表示される | AuthCodeの入力ミス/AuthCodeの有効期限切れ | AuthCodeを再発行し、正確にコピー&ペーストして入力し直す |
申請しても移管が進まない | レジストラロックが解除できていない | 再度ロック状態を確認し解除したうえで、移管申請をやり直す |
他にも、「ドメイン取得直後で移管できない」(→60日経過まで待つ)、「移管先レジストラがそのTLDを扱っていない」(→対応レジストラを探すか継続利用を検討)といったケースがあります。
しかし事前準備をきちんとしていれば、ほとんどのトラブルは防止可能です。
万一トラブルが発生しても落ち着いて原因を洗い出し、適切に対処すれば移管作業を完了できます。
まとめ:安全・確実にドメイン移管を完了させよう
ドメイン移管は、サイト売却など売り手と買い手の管理会社が異なる場合に発生する重要なステップです。普段は意識する機会の少ない手続きですが、いざという時に慌てないように基本的な流れや各社の手順の違い、注意点を把握しておくことが大切です。
特に、移管前のWHOIS情報の確認(メールアドレス含む)やロック解除、60日ルールのチェックなどの準備が鍵となります。
これらを怠ると「承認メールが届かない」「申請が却下される」等のトラブルにつながりますが、裏を返せば事前準備さえ万全にしておけば移管作業は決して難しくありません。
本記事のガイドに沿って慎重に手順を踏めば、初心者の方でも問題なくドメイン移管を完了できるはずです。
もし「それでもやっぱり不安…」という場合は、無理せずプロに頼るのも一つの方法です。
M&Aクラブでは、サイト売買時のドメイン移管手続きに関するガイド提供やサポートも行っています。移管方法について悩んだら、お気軽にご相談ください。